【大会の主旨】
古流の形には、心身技法の要素である呼吸法・構え・運足・刃筋・間合・打突などが数多く含まれている。東京都剣道連盟は、形剣道の修練により剣道の基本を正しく身に付けるとともに「日本剣道形」を伝承し、次世代に継承することが剣道の発展に寄与する、という認識のもとに本大会を開催することとした。この主旨を正しく理解して、日頃の成果を存分に発揮されることを期待するものである。(大会パンフレットより)
六・七段の部決勝戦
警視庁(野田豊廣、中村光寿)対 練馬(塙 篤雄、青木健一)
四・五段の部決勝戦
警視庁(岩永二郎、梶原浩樹)対 西東京A(今野和香子、尾崎 美優)
三段の部決勝戦
警視庁(太田隼人、宮田達也)対 高体連(榊原孝明、豊田 陽)
公開演武:直心影流 法定
谷口 茂樹
片岡 真理
法定の教えは、呼吸法、太刀筋、気合、間合、運足などを学ぶところに大きな特徴がある。
形は「八相発破」「一刀両断」「右転左転」「長短一味」の四本からなる。各本毎の修練に対する考え方・理合は次の通りである。
一本目「八相発破」・・・春季発揚の(伸び伸びとした)気勢で発し破る事を勤める。
二本目「一刀両断」・・・夏季炎天、勇気を全體に充実させ、間髪を容れない勢力ももって勤める。
三本目「右転左転」・・・秋季粛殺の気勢(厳しく草木を枯らす)で、無窮の変化を勤める。
四本目「長短一味」・・・冬季陰蔵に象り、精神の昇降自在を内修し、業は最も静かに勤める。
法定は「劼(キルツク)撃抑ユルノ時ニ在ラズシテ、却テ酬酢( シウサク)云為(ウンイ)ノ中ニ在リ」と言われている。
即ち、法定が求めるところは、形を打つ中で切る突くなど技法の上達のみを目標とするのではなく、
日常の対応の中に真の稽古が在ると言われている。
更に、法定は「後来習態(こうらいしゆうたい)の容形を除き、本来清明の恒体に復するにあり」とも言われている。
即ち、修練の目標は、人が生まれた後に身についた種々の癖を取り除き、本来有っている清く明るい命の本来に復することを狙いとしている。
直心影流は、鹿島の人、松本備前守尚勝(のち改め政元 1478年~1534年)に始まる。
形は修練の進み具合に応じ、「法定」から「韜之形」、「小太刀」、「刃挽」と進む。
「刃挽」は「法定」を楷書とすれば草書にあたるもので、「法定」の裏にあたる。
そして、最後の極致に「丸橋」がある。
法定は、その哲学、修練の手法・狙い、形の特徴等から見て、剣道の基本を身に付け、日本剣道形の理解を深めるためにも、習熟する価値が高い。
公開演武:五行之形
石井 猛
井上 豊
「五行」とは「陰陽五行説」になぞらえ、木火土金水、または天地人陰陽を形どっており、上段、中段、下段、発相、脇構えの5つの構えから成り立っている。この形は、気の働きに重点を置き、足の運びなどについては、特に定められたものではなく、相手との関係を真に生かす相互作用の生きた使い方に生命があり、丸く、角ばらず、柔らかいが、内に強いものを含んだ、極めて荘重にして迫力のある使い方をするところに特徴がある。
「五行乃形」は、小野派一刀流の内から特に五本の組み合わせ、高野佐三郎範士が、東京高等師範学校体育科の剣道主任教授となった時、この形を、教師として教えやすく、また生徒ついしては学びやすいように研究、工夫、創成して、新しく「高等師範の五行乃形」と指導し、教授されて現在に伝えられている。
形は単なる形をまねるものではなく、常に実践に応用できる理合、太刀筋を含んでいる。それゆえ、一つ一つ形の意味をよく理解し、それを常に忘れず技を出し合わななければならない。日本剣道形と表裏して修練すると剣道の研究にも役立つと考える
公開演武:日本剣道形
打太刀 教士七段 木村慎太郎
仕太刀 錬士六段 濱田 大介
打太刀 教士七段 木村慎太郎
仕太刀 錬士六段 濱田 大介
日本剣道形は、先人の英知を尽し、各流派の術理の精粋を勘案し、鋭意調査協議を重ねた結果、いずれの流派にも属さない各流派統合の象徴として創造したものであり、今日にも伝承された文化遺産である。
しかも、日本剣道形は長い歴史を持ち、理合及び精神面に深い内容を持つまでに発達したものである。この伝統的文化遺産である日本剣道形を正しく継承し、時代に伝えることは意義がある。
その目的は、技術力の向上を大きなねらいとして実施するのであるが、剣道形を繰返し修練することによって、剣道の基礎的な礼儀作法や技術、剣の理合を修練することができる。さらに内面的な気の働きや気位といった剣道の原理原則を会得でき、剣道の規範となるものである。
(全日本剣道連盟 剣道社会体育教本「改訂版」から抜粋)
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